ホスピスに転職したいけれど、「自分にできるかな」と不安に感じていませんか?
私自身、総合病院からホスピス型施設に転職する前は、不安でいっぱいでした。
急性期病院では亡くなる方もいましたが、元気に退院していく方の方がほとんど。緩和ケアに興味があってホスピスを選んだとはいえ、「人の最期に向き合い続けて、精神的に大丈夫だろうか」という不安はゼロではありませんでした。
それと同時に強かったのが、「ホスピスでは幅広い分野の知識が必要なのに、自分の知識だけで対応できるのか」という実務面の不安です。
実際にホスピス型施設の管理職として働き続けて、現場でスタッフを見てきた経験から、「ホスピスに向いている人」には共通点があると気づきました。
一方で「向いていないかもしれない」と感じて辞めていく人にも、傾向があります。
この記事では、現役の管理職看護師として日々スタッフと向き合ってきた立場から、次の3つをお伝えします。
- ホスピスに向いている人の5つの特徴
- 逆に向いていないと感じやすい人の3つのタイプ
- 「向いていないかも」と感じたときに考えてほしい視点
なお、ホスピスには緩和ケア病棟・ホスピス型施設・在宅ホスピスなど複数の形態がありますが、本記事はホスピス型施設での管理職経験をベースにお伝えします。形態が異なっても共通する部分が多いので、緩和ケア病棟や在宅ホスピスを検討している方にも参考になる内容です。
「自分は本当にホスピスでやっていけるのか」と迷っているあなたに、判断のヒントとなれば嬉しいです。
▼私自身の転職体験談はこちら
[内部リンク:看護師3年目でホスピスに転職した私が、本音で振り返る]
ホスピスに向いている人の5つの特徴
ここからは、現役の管理職として現場でスタッフを見てきた経験から、ホスピス看護師に向いていると感じる人の特徴を5つ紹介します。
すべてに当てはまる必要はありません。「自分にも近い部分があるかも」と感じたら、十分に適性があると考えていいでしょう。
① 相手のペースに合わせられる人
ホスピスで大切にされるのは「利用者本人のペース」です。
緩和ケア病棟、ホスピス型施設、在宅ホスピスのどの形態でも、共通して大切にされているのが「利用者の意思や状態に合わせた看護」になります。急性期のように「処置を優先」と割り切るのではなく、「今日は食事を食べたくない」「もう少し休ませてほしい」という訴えを受け止め、ケアの順番や声かけを柔軟に調整していきます。
決まったスケジュールをただこなすのではなく、その場その場で利用者の状態を読み取って動く力が求められます。
自分の段取りを崩されるのが苦手な人より、相手のリズムを汲み取って柔軟に動ける人の方が、ストレスなく働けるでしょう。
💬 私自身の経験
入職した当初に先輩から「病院は治療の場だから医師の判断が優先されるけれど、ここでは利用者さん本人の声が一番優先される。何事も選択権はご本人にあるからね」と言われた経験があります。
この言葉を聞いて、ホスピスでは何より「利用者ファースト」が軸なのだと強く実感しました。今でも一番大切にしている考え方です。
② 「治す」より「支える」に価値を感じる人
ホスピスでの看護は、「治療して回復させる」のが目的ではありません。「残された時間を、その人らしく穏やかに過ごせるように支える」のが看護のゴールになります。
そもそも看護師の業務は、医師が行う「治療」とは異なります。中心となるのは「療養上の世話」と「診療の補助」です。利用者の生活を整え、苦痛を和らげ、表情や状態の変化を観察して医師につなぐ――この積み重ねがホスピスの看護です。
急性期での看護のやりがいが「患者さんが元気に退院していく姿を見たとき」だとすれば、ホスピスでのやりがいは「最期まで穏やかに過ごせる時間をつくれたとき」や「ご家族が後悔のないお別れができたとき」だと私は思います。
「もっと治療に近い場面で力を発揮したい」と感じる人より、「その人の最期の時間を支える看護をしたい」と感じる人の方が、ホスピスでのやりがいを実感しやすいでしょう。
💬 私自身の経験
急性期病院で働いていた頃から「もっと一人ひとりの最期に寄り添う看護がしたい」という気持ちが芽生え、緩和ケアに興味を持ってホスピスを選びました。
急性期では「患者さんが元気に退院していく姿」が大きなやりがいでしたが、ホスピスに移ってからは違う種類のやりがいに出会えました。「利用者さんが穏やかな表情で過ごせる時間をつくれた」「ご家族から『ここを選んで良かった』と言ってもらえた」――そんな瞬間に、急性期では味わえなかった充実感を感じています。
「治す」だけが看護じゃない、と心から思えるようになったのはホスピスに来てからです。
③ 感情の起伏をコントロールできる人
ホスピスでは、利用者との別れが必ずやってきます。仲良くなった方ほど、お別れの瞬間はつらいもの。ご家族の悲しみに触れる場面も日常的にあります。
ただ、看護師が感情に引きずられすぎると、ケアの質が落ちてしまいます。共感はしっかりするけれど、自分の感情で溺れない――そのバランス感覚が大切です。
「悲しいときは悲しい」と受け止めつつ、次の日にはまた別の利用者に向き合えるよう気持ちを切り替えられる人。感情を押し殺すのではなく、上手に流せる人の方が長く続けられます。
💬 私自身の経験
仲良くなった利用者さんが亡くなったときは、何年経っても胸に来るものがあります。短い期間のお付き合いであっても、それは変わりません。
それでも次の日には別の利用者さんに向き合わなければなりません。完全に切り替えることはできなくても、自分なりの整理の仕方を持っているからこそ、続けてこられたのだと感じています。
(※整理の仕方の具体例は⑤で詳しく触れます)
④ チームで考えることを大切にできる人
そもそも看護はひとりで完結する仕事ではありません。特にホスピスでは多くの職種が関わり合いながら、「ひとりの利用者にとってのより良い最期」を一緒に考えていきます。
連携する顔ぶれは多彩です。
- 医師
- 看護師
- 介護士
- ケアマネジャー
- ご家族
急性期では、その場での迅速な判断が求められる場面が多くあります。患者の容体が急変したとき、いかに早く適切な処置につなぐかが命を左右するからです。
一方ホスピスでは、命を救うための迅速さよりも、「この方にとって本当に良い時間とは何か」をじっくり考えることが重要になります。本人の希望、ご家族の想い、医学的な見立て――いくつもの視点をすり合わせながら、最善のケアを多職種で組み立てていきます。
ただし、ホスピスだからといって常にゆっくり考えていられるわけではありません。残された時間が限られているからこそ、状態の変化に応じて素早く多職種と連携し、ケアの方向を切り替えていく場面もあります。「じっくり考える力」と「必要なときに素早く動ける連携力」――どちらも求められるのがホスピスの現場です。
そして「じっくり考える」も「素早く動く」も、共通して必要なのは多職種との情報共有や相談です。だからこそ、コミュニケーションが苦手な人や、何でも自分の判断だけで動いてしまう人には、少し厳しい環境かもしれません。
仲間を信頼して相談・共有できる人は、ホスピスのチームの中で自然と力を発揮できます。
💬 私自身の経験
当施設では、医師・看護師・介護士・ケアマネジャー・ご家族と連携しながら、ひとりの利用者の最期の時間をどう支えるかを話し合う場面が多くあります。
看護師一人で見ていると気づけないことが、介護士やケアマネの視点を入れるとはっきり見えてくる瞬間は多いです。「自分が一番分かっている」と思い込まずに、周りの意見に耳を傾けられる人ほど、結果的に利用者にとってより良いケアにたどり着けます。
⑤ 自分なりの「気持ちの整え方」を持っている人
ホスピス看護は、感情を使う場面が多い仕事です。仲良くなった利用者が亡くなったときは、短い期間であっても胸に来るものがあります。
だからこそ、自分なりの「気持ちの整え方」を持っている人が長く続けられます。
私が大切にしているのは、利用者が亡くなった後に「自分はその人のために何ができただろうか」と振り返ってみることです。
「あのとき○○して喜んでもらえた」「ご家族から『ここを選んで良かった』と言ってもらえた」――そんな”自分にできたこと”に目を向けると、不思議と「自分なりの良い看護ができた」と思える瞬間があります。
「本人にとって良い最期だったかどうか」は、本人にしか分かりません。そこを抱え込みすぎるとつらくなってしまうので、私は「自分ができたこと」に焦点を当てて消化するようにしています。
休日に趣味でリフレッシュする、家族と過ごす、運動するなど、方法は人それぞれでかまいません。大切なのは「自分の心を回復させる引き出しを持っているかどうか」です。
ホスピスに向いていないと感じやすい人の3つのタイプ
ここからは逆に、「ホスピスでは少しつらいかもしれない」と感じやすい人のタイプを3つ紹介します。
ただし大事なのは、当てはまったからといって即「向いていない」と決めつけないこと。慣れや工夫で乗り越えられる部分も多いので、自己理解のチェックとして読んでみてください。
① 患者の回復を見届けることに、強くやりがいを感じる人
急性期で長く働いてきた看護師に多いタイプです。「自分のケアによって患者が少しずつ良くなっていく姿を見ること」が看護のモチベーションになっている方は、ホスピスではやりがいを感じにくくなりがちでしょう。
ホスピスでは、利用者の状態は時間とともに穏やかに進んでいくのが前提。「回復」という形での成果が見えづらいぶん、自分の看護の手応えを別の角度から感じ取る必要があります。
回復という分かりやすいゴールがないと張り合いが持てない、と感じる人にとって、ホスピスは少し物足りなく映るかもしれません。
② 死や別れの場面に強い苦手意識がある人
「人の死に立ち会うのが怖い」「ご家族の悲しみに触れるとどうしてもつらくなって引きずってしまう」――こうした感覚が極端に強い場合、ホスピスでは精神的な負担が大きくなりやすいです。
ホスピスでは、看取りそのものが看護の一部。月に何度かは別れの場面が訪れますし、ご家族の悲しみに寄り添う場面も日常的にあります。完全に避けて通る道はありません。
誰でも最初はつらく感じるものです。経験や同僚との関わりの中で少しずつ整理できるようになっていく方も多いので、「苦手意識がある=向いていない」と即断する必要はありません。ただ、自分の心が極端に揺さぶられやすい自覚があるなら、無理を重ねないことが大切です。
③ 自分のペース配分を完全にコントロールしたい人
「業務の段取りは全部自分で組み立てたい」「人に予定を崩されるとイライラしてしまう」というタイプの方も、ホスピスでは苦労しやすい傾向があります。
ホスピスでは、利用者の状態が急に変化することも珍しくありません。「今から予定していた処置」を後回しにして、急な対応に切り替える場面が日常的に発生します。多職種からの相談や連絡が割り込んでくる場面も多いでしょう。
「自分の段取りどおりに進めたい」気持ちが強すぎると、毎日のように発生する予定変更にストレスを感じやすくなります。柔軟さを持って「予定が崩れて当たり前」と受け止められる人の方が、ホスピスでは無理なく動けます。
「向いていないかも」と感じたときに考えてほしい視点
ここまで読んで、「自分には向いていないかもしれない…」と感じた方もいるかもしれません。
ただ、すぐに諦める必要はないと私は思っています。最後に、判断する前に持ってほしい3つの視点をお伝えします。
1. 「向いていない」と感じる部分の多くは、経験で変わっていく
ホスピスでの看護は、最初から完璧にこなせる人はほとんどいません。
看取りに動揺してしまう、ご家族の悲しみに引きずられてしまう、利用者のペースに合わせて動くのに戸惑う――こうした感覚は、経験を重ねるうちに少しずつ自分なりの対処法が身についていきます。
最初の数か月で「自分には向いていない」と判断するのは早すぎるかもしれません。先輩や同僚に相談したり、自分なりの気持ちの整え方を見つけたりするなかで、見え方が変わっていく場合もあります。
2. 知識面の不安は、現場で学びながら埋めていける
「ホスピスでは幅広い分野の知識が必要そう」「自分の知識で対応しきれるのか」――こうした不安を持つ方も多いはずです。私自身、転職前に一番気になっていたのもこの点でした。
ただ、実際に働き始めてみると「案外なんとかなる」というのが率直な感想です。理由は3つあります。
① 緩和ケアは標準化が進んでいる分野
緩和ケアは、日本緩和医療学会がガイドラインを発行し、厚生労働省も普及啓発に力を入れている領域です。たとえば、がん患者の疼痛コントロール(オピオイドを用いた鎮痛管理)、呼吸困難への対応、悪心・嘔吐や倦怠感の緩和、終末期せん妄へのケアなど、ホスピスでよく対応する症状に対しては基本的な考え方や対応の流れがある程度共通しています。施設や病棟ごとに方針が大きく違うわけではないので、「ここでは特殊なことが求められるのでは」と身構えなくても大丈夫です。
② 経験豊富な先輩から学べる環境が多い
ホスピスには長年緩和ケアに携わってきたスタッフが在籍していることが多く、分からないことはその場で聞いて学べる環境が整っているケースが目立ちます。逆に、自分が急性期で身につけた新しい知識を共有できる場面もあります。お互いの経験を持ち寄って、チーム全体の知識を底上げしていける環境です。
ただし注意点もあります。基礎的な看護知識や病態理解がほとんどない状態で飛び込んでしまうと、現場でつまずく場面が増えてしまいます。「あとから学べばいい」と何の準備もせずに来るのではなく、ある程度の基礎は持っていることが前提となります。
③ 急性期の経験は意外と活きる
私自身、総合病院に勤めていたのは3年だけでしたが、それでもホスピスで十分に通用しました。バイタル管理、急変対応、観察力――急性期で培われる基礎的な看護スキルは、ホスピスでも形を変えて活きてきます。
💬 私自身の経験
転職前は「もっと勉強しなきゃ」と意気込んでいましたが、振り返ってみると案外問題ありませんでした。もちろん細かい部分の知識は必要ですし、ある程度の病態理解は欠かせません。それでも、すべての知識を完璧に押さえてから飛び込まなければならない、というわけではありませんでした。
興味があれば緩和ケア認定看護師や終末期ケア専門士といった資格を取る道もあります。私自身、現場メインから管理者になって利用者と関わる時間が少し減った一方で、ご家族と話す機会が増えました。その経験を通じて、改めて緩和ケアを体系的に学び直したいと思うようになっています。
3. ただし、自分の「違和感」は大切にする
その一方で、「無理をして続ける必要はない」というのも事実です。
何か月経っても気持ちが追いつかない、職場に向かう朝が憂うつでたまらない――そういった違和感が続くなら、それは「自分には合っていない」という心からのサインかもしれません。心や身体を壊してまで続ける看護はありません。
向いていないと感じるのは、悪いことではありません。「自分が大切にしたい看護のかたち」がはっきりしている証拠でもあります。
4. 「ホスピス=1つの形」ではない
ホスピスといっても、緩和ケア病棟・ホスピス型施設・在宅ホスピスなど、形態によって働き方や雰囲気は大きく違います。
たとえば「施設での生活援助が中心の関わりは合わなかったけれど、病棟での医療色の強い緩和ケアならやりがいを感じられた」という人もいれば、その逆もあります。
「ホスピスそのものに合わない」と感じる前に、「他の形態だったらどうだろう」と視野を広げてみる価値はあります。
なお、終末期ケアに関する研修や、終末期ケア専門士といった資格取得を通じて、自分の中の苦手意識が整理されていく場合もあります。
まとめ|迷うあなたに向いている
最後に、この記事の内容を振り返っておきましょう。
ホスピスに向いている人の5つの特徴
- 相手のペースに合わせられる人
- 「治す」より「支える」に価値を感じる人
- 感情の起伏をコントロールできる人
- チームで考えることを大切にできる人
- 自分なりの「気持ちの整え方」を持っている人
逆に向いていないと感じやすい3つのタイプ
- 患者の回復を見届けることに、強くやりがいを感じる人
- 死や別れの場面に強い苦手意識がある人
- 自分のペース配分を完全にコントロールしたい人
私が現役の管理職として伝えたいのは、「迷っている時点で、ホスピスに向いている可能性は十分にある」ということです。
「自分にできるかな」と立ち止まって考えられる人は、それだけ目の前の利用者やご家族のことを真剣に想像できる人。その想像力こそ、ホスピス看護で最も大切な資質のひとつだと私は感じています。
完璧な人なんていません。私自身、転職当初は不安だらけでしたし、今でも迷う場面はあります。それでも、利用者とご家族の穏やかな時間に関われた瞬間に、「この仕事を選んでよかった」と思える日がきっと来ます。
関連記事
▼ホスピスに転職した私自身の体験談
[内部リンク:看護師3年目でホスピスに転職した私が、本音で振り返る]
▼ホスピス看護師の1日の仕事内容を知りたい方へ
[内部リンク:ホスピス看護師の仕事内容とは?1日のスケジュールと看取りのリアル]
▼そもそも「ホスピス型施設」と「病院のホスピス」の違いは?
[内部リンク:ホスピス型施設とは?病院のホスピスとの違いを現役管理職看護師が解説]


コメント